塩出浩之『琉球処分』
愛知県一宮市の個人塾、いしだ塾の塾長、石田喜嵩です。
沖縄
私が沖縄について知るようになったのは、角川ソフィア文庫の『沖縄文化論集』というアンソロジーと、大江健三郎の『沖縄ノート』、それから比嘉春潮他による『沖縄』を読んでからです。ほぼ同時期に読んだと思います。
『沖縄文化論集』では大学生協の書評誌に書評を投稿しました。
『沖縄ノート』は大江ならではの熱のある文体とともに、強い印象を残します。
『沖縄』は三条の丸善で購入した足で近くのサンマルクカフェに入って読みふけったのを思い出します。
どれもいい本です。
失われた沖縄、また、それとともに失われた日本文化の起源。
戦後沖縄の苦悶、政治のやるせなさ、内地人の無関心。
沖縄人の昔と今の姿。
それぞれの作品は、それぞれに、沖縄と本土の間のつながりと断絶を同時に示しています。
私にとって沖縄は地理的にも、文化的にも、土地としても、親しみのない土地であると同時に、決して無関係でなく、無関心であってはならないものであることを知りました。
琉球処分という問題は、上記三冊において少しずつ触れられているものの、よく分からないままのものでした。
『琉球処分』
著者の言によれば「歴史学者が書いた本で、手に取りやすいものはこれまでほとんどなかった」というこの琉球処分という問題について、手軽に知ることができるのが本書です。
歴史のおもしろさ
私はまず、歴史のおもしろさを感じました。
歴史学の厳密性を大きく損なうことなく、それでいて一般読者に読みやすいという稀有な書物のおもしろさです。
いわゆる歴史の力学というのが、いかに微妙な人事、事物の配列に左右されて大きな事件を引き起こすことになるのか。
これは、現実を理屈やイデオロギーで割り切ろうとすることはできないということを教える良い教材でもあります。
著者は、本土人として、琉球大学で琉球処分の講義をしようとして「失敗」した。
その反省をもとに琉球の視点を踏まえつつ琉球処分を説き起こしたのだといいます。
本書の叙述が決して琉球に肩入れすることはなく、しかし琉球の側の人々の思惑や面影を生き生きと躍動させることに成功しているのは、そのためでしょう。
琉球処分という問題
「琉球処分」という問題そのものについて、本書から学んだことは書きつくせないほどです。
維新後の政府は琉球併合のために相当強硬に振る舞ったこと。そしてそれはなぜであったか。
琉球の方でもかなり自分たちの立場を守るための行動をしてきたということ。政府の仕打ちにもかかわらず抵抗運動は続けられたこと。
分割案のこと。
琉球処分が最終的に確定したのは日清戦争という武力行使の結果であったこと。
浦賀に来航したペリーをはじめとする西洋諸国の代表、琉球処分を推し進めた大久保利通ら、琉球の尚家やその周辺、清側の人々それぞれに、相手国を明らかに信用できないでいること。信用できないせいで平和的な手段も使えないこともあったろうということ。
本書の主な叙述は、琉球処分が確定する日清戦争で終わります。
その後、特に戦後のことについては、また改めて学ばなければなりません。
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